スマート・テロワールの実践者たち

スマート・テロワール協会は2020年12月よりオンラインにて毎月一回講演会を開催しております。

日本の各地域でスマート・テロワール構想を実践的に展開されておられる方々にご登壇いただき、スマート・テロワール構想に関心をお持ちの方、またこの構想を積極的に実践されている方、あるいは実践に踏み出そうとされている方々に情報提供を行なっております。

この情報がスマート・テロワール構想のさらなる深化と進化の化学反応を誘発する触媒になることを期待しております。

ここでは毎回の講演の解説と問題提起を協会理事の藻谷浩介さんにお願いして開陳していただいております。

なおこの藻谷氏の論考は月刊誌『農業経営者』に掲載されたものです。

同誌の昆編集長のご厚意により転載のお許しをいただきました。

昆編集長には改めて厚く御礼申し上げます。

 

 

農山村集落から始まる再生     「地元」から日本と世界を創り直す

いわゆる「過疎地」にも、成り立っている専業農家はたくさんある。しかし地域全体で人口の減少が止まらなければ、いずれ学校が消え病院が消え店が消えて、農業は成り立っても暮らしは成り立たなくなる。つまり、農業が再生するだけでは地域は再生しない。

今はもう亡くなられた方々が 田んぼや水路や橋や木々を長年の営みで守り伝えて来た「地元」 その価値にもう一度気付き、自分も次世代に何かを残していくことは 、できないのだろうか。

この問題に正面から向き合っているのが 、持続可能な地域社会総合研究所の所長 、藤山先生だ。島根県益田市の川べりの伝統的家屋に住み、赤い石見瓦の美しい海辺の集落にオフィスを構え、地べたの声に寄り添いつつ、集落単位で人と所得とエネルギーの循環を紡ぎ直そうとしている

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シビック・アグリカルチャー「食と農の自給圏」は可能か?

農村には本来 、長年伝えられて来た農地がある 。食料やエネルギーを自給して再生しながら継続して行ける可能性がある。そうした農村のポテンシャルを引き出し、自分も次世代に何かを残していくことは、可能ではないだろうか。 そうした農業を核にした地域社会の再生ができるとするなら 、それを実現する主体は誰なのか。農村の存続を模索するすべての皆様に、以下では、米国発の「シビック・アグリカルチャー」という運動をご紹介したい。その上で、なぜ日本では「農業」の再生が、「農村」の再生になかなかつながっていかないのか、この運動の紹介者である獨協大学の北野収教授のナビゲーションにより根源的な問題を解き明かしていこう。

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コンビニでも地元産小麦を使ったパン 茨城県で起きた奇跡のコラボ

鳥山雅庸氏(株)リバティーフーズ&染野実氏(有)ソメノグリーンファーム(茨城県)

コメ余りで米価が下がる中、円安と世界景気の過熱で、輸入小麦は値上げされている。パンの値段も上がりそうだ。 なぜこの機会にコメ農家は、水田を小麦畑に変えて儲けようと思わないのか? なぜ大手パンメーカーは、年々人気の高まっている国産小麦を使わないのか? パン用小麦の国産比率は、2009年の調査でわずか3%だった。現在は当時より上昇していると推測されるが、それでも圧倒的に多くのパンは、輸入小麦から製造されている。そもそも、実用に耐えるだけのタンパク質含有量を持つパン用小麦は、本州以南では安定的な生産が難しいのだ。

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大津波でも流せない テロワールと人の底力 復興最前線の挑戦者たち(岩手県陸前高田市)

2万人以上が亡くなった東日本大震災から、今年で10年となる。しかし今の話題といえばコロナで、震災への関心は風化したようだ。「復興五輪」も、復興との関係がうやむやなままに終わってしまった。
しかしこの間も三陸の津波被災地では、粛々と、復旧(=元に戻す)、復興(=以前よりも良くする)に向けた取り組みが続けられてきた。三陸ならではの、奥深い山と澄んだ海のもたらす恵みは消えていない。コンクリートの防潮堤は100年ももたないが、百年後、千年後にもそこに、土地の恵みを受けて楽しく元気に暮らす人が住んでいるのであれば、復興は成ったことになる。
挑戦し冒険する傾向を持つ者は、人種・民族・文化を問わず一定数生まれて来る。彼らが、守り、根付く性格の者とセットになって相補うことで、人間という生物種は、地球の隅々にまで生存領域を広げてきたのだ。
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農協が担う最先端の「農村経営」 大都市にない豊かさの源泉とは

農協というのは、因果な組織だ。実態をよく知らない都市住民からは否定的なイメージを持たれているし、農山村に住んだり関わったりしてその実態を知っている人からも、悪しざまに言われることが多い。「コメへの保護政策にしがみ付いて補助金に依存し、農業よりも金融保険事業に注力する組織」だとか、「組織維持のために合併を繰り返し、地域から離れて肥大化し政治化した、既得権擁護の団体」といったような感じだ。

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農業x若者xITが爆発的進化を遂げる月山高原

農家の子弟という「身分」を持たない若者たちが、ITを駆使して農業に挑戦する、山形県鶴岡市月山高原。農業×若者×ITがもたらすノウハウの爆発的進化の先に、まだ誰も見たことのない未来が見え始めている。

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「スマート・テロワール形成講座」成果報告会

山形大学農学部(山形県鶴岡市)では、2016年度から5年間、「食料自給圏『スマート・テロワール』形成講座」を実施してきた。スマート・テロワール構想の提唱者、(故)松尾雅彦氏による寄付講座である。 予定期間の終了を受けてこのたび、この講座を担当した研究者諸氏によるオンライン報告会が、一般社団法人スマート・テロワール協会の協力を得て開催された。

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業種を超えた企業戦略のお手本”王道の農業経営”

日本における、“農業経営の王道”とは何か。農協の言うとおりに農薬と肥料と農機を買い、当局の言うとおりに日本スケールの“大規模集約化”を試みて、米を作れば王道… だった時代があるのだろうか。

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信州の小さな町で、非農家出身の若者たちが創業した牧場の未来

長野県で一番面積が小さく、人口も1万人少々の小布施町。そこにUターンして出版業を営む父に、「荒野」と名付けられた木下青年。「荒れ野の預言者」ヨハネにちなんだのか、荒野を開拓する者たれということか、その名の通りに少年時代から酪農を志し、修業を積んで、故郷に「小布施牧場」を創業した。

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志産志消が息づく「当地ならでは」×「この人ならでは」

皆がなんとなく当たり前と思っていることほど、「本当にそうなのか」が、深くは考えられていないものだ。「農業は男が主導するものだ」とか、「高額すぎる国産食材は売れない」とか、「平地のない山村は農業不適地だ」とか、「乳牛の肉はおいしくない」とか、我々は機械的に、何の根拠もなく思い込んでいる。

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天地人の一致が生んだ耕畜連携の鏡

岩手県花巻市は宮沢賢治ゆかりの地だ。彼の童話「グスコーブドリの伝記」では、冷害で米の不作に苦しむ人たちを救うために、若い主人公が命を捧げる。しかし、当地にとってそれほどに大事なものだった水田が、今は余りに余る時代となってしまった。

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「農民として幸せに暮らすため」に始めた放牧酪農

1947年に祖父たちが水田として開拓し、1963年に祖父と父たちが酪農を始めた、利根河畔の湿地。2005年に初めて、思い切って牧草地に牛を放ってみた朝、牛たちは本当に嬉しそうに、生まれて初めてのはずなのにまるで生まれたときからそうしていたかのごとく、大地に生えた草を噛み始めたという。

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