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農地で太陽光発電

日経新聞1226日の報道

 

13日閉幕した第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)で2030年までに太陽光など再生可能エネルギーの容量を現在の3倍に拡大する案が合意され、日本も対策強化を迫られることになった」。

しかし日本の再生エネ導入の現行計画は30年度に22年度の1.5倍のレベルにすぎない(下図COP28.PDF)。

COP28で合意した3倍を既存タイプの太陽光設備だけで実現するなら、東京232.5個分の用地を新たに確保しなければならない」。

これまでメガソーラーの用地として利用されてきたのは主として中間山地や山地の傾斜地だった。しかし中間山地や山地でのメガソーラーの設置は景観を悪くするとか、災害の原因になるということから、メガソーラーの用地としてこれ以上の拡大は期待できない状況に陥っている。

そこで農地が太陽光発電基地として注目を集めることになった。農地を太陽光発電基地として活用するには二つの方向がある。一つは休耕地や耕作放棄地を用途転用して太陽光発電専用基地にする方向だ。二つ目は農地として農作物を栽培しながら同時に太陽光パネルを設置する(ソーラーシェアリング)方向だ。

耕作放棄地を除いて農地を太陽光発電基地に用途転用するには農業委員会の承認が必要だ。しかしながら農業委員会はこの農地転用には後ろ向きのようだ。

使っていない農地があっても、農地面積が減ると国からの交付金が減るので、農業委員会は後ろ向きなのだそうだ。

さらには農産物の自給率を上げるためには現在は遊休地や休耕地であっても、いずれは有効活用しなければならない未利用資源であるからには、農地としての活用を前提に太陽光発電の設置を企画することが求められなければならない。つまり休耕地や耕作放棄地を用途転用して太陽光発電専用基地にする方向は求めるべきではない。

また農地に棚を設置してその上に太陽光パネルを置くとなると大型の農機が使えなくなるという課題も生じてくる。さらには発電後に電気を配送する電力会社の送電線に繋ぐための中継線の設置も状況次第でバカにならないコストがかかる。休耕地や耕作放棄地は多くは人里離れたところにあるとすればそのコスト増の障害はより大きなものとなるだろう。

しかしメリットもある。太陽光パネルの開閉を自動的にコントロールするプログラムを組み込めば農地に注ぐ太陽光のコントロールが可能になる。農作物の生育状況に応じて最適な太陽光の量の調節ができれば、最も快適な環境での農作物の栽培が可能になり、たぶん農産物の質量改善に大きな貢献をすることになる可能性が高い。

今後夏季の酷暑状況が常態化することを思えば、農地へのソーラーパネルの設置は実現しない手はないと思われる。

以上のことから農地を太陽光発電基地へと転換するためには、まずは休耕地や耕作放棄地を将来農産物の栽培を可能にすることを前提にした上での活用、すなわちソーラーシェアリングでの転換を進めることが必須である。

政府はこの方向でのソーラーシェアリングの拡大を推進する方針を定め、そのための障害を排除する上で必要な中継線の設置に伴うコストの軽減措置や大型農機を活用できるための技術革新を積極的にサポートするなどの積極的な政策推進を迫られているといえよう。

景観を損なう課題については休耕地や耕作放棄地が放置され、農村景観を損なう現状を整地し、農作物の栽培風景をとりもどすことにつながることを思えば次善の策として赦されるのではないだろうか。

  

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