元旦の日経新聞が興味深い記事を掲載した。
「国連食糧農業機関(FAO)が算出する食料価格指数(14~16年=100)は、
21年11月時点で134.4と、
前年同月比で27%上昇。
穀物や砂糖の価格上昇が理由だ。
国際的な先物価格をみると、
食用油の原料になる菜種は20年末に比べて7割上昇。
粗糖(砂糖)は21%上がり、
小麦は22%高となった」。
食料価格の高騰の要因は4つ
第一の要因は気候危機がもたらす異常気象だ。
ブラジルは90年ぶりの歴史的少雨で、とうもろこしの生産が低迷した。
カナダは夏の熱波で菜種の生産量が30%減少した。
第二の要因は化石燃料に代わってバイオ燃料の消費が拡大したことだ。
「すでに米国の大豆油の約4割、ブラジルのサトウキビ(粗糖の原料)の5割程度がバイオ燃料向けに使われ、搾油工場の増強計画も相次ぐ。燃料消費の拡大を期待した投機マネーも穀物市場に流入した」。
第三の要因はコロナ禍による海外渡航禁止による労働力の減少だ。
パーム油は主産地マレーシアがコロナ禍のあおりで労働者不足に陥った。
世界各地で収穫時に外国からの季節労働者の渡航が困難になり、収穫量の減少を余儀なくされている。
日本でも海外からの「技能実習生」の受け入れが事実上できなくなったことが、農業生産者に人手不足の困難を拡大することになった。
第四の要因は肥料価格の上昇だ。
脱炭素化によって石炭の生産量が減少し、
石炭の代替燃料である天然ガスの需要が急増し、価格も急騰した。
これに伴い、アンモニアの価格が高騰し、
アンモニアを原料とする肥料の価格が上昇した。
「マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)は21年の米国の肥料コストが前年比で1割強高くなったと推定する。最近はアンモニア自体がクリーンな燃料として使われ、中長期的な値上がりも見込まれる」。
このように食糧生産は世界的に価格高騰につながる四重苦の波に飲み込まれている。
こうした食糧生産をめぐる四重苦は一過性のものではなく、今後の農業が直面する長期的な困難になると言えるだろう。
日本は五重苦
そして日本の食糧価格をめぐる状況は、円安による輸入食糧の価格上昇というもう一つの更なる困難を抱えることになる。
欧米各国では経済成長の回復局面に入りつつある中で、物価の上昇と金利の上昇の局面を迎えている。
これに対して日本の経済は、賃金の継続的な停滞状況と、それに起因する消費の低迷によって未だ回復軌道には乗っていない。
この状況は短期的に反転する状況にはない。
したがってしばらくは欧米との金利差が拡大し、円安の状況が継続することになる。
日本は食料自給率が38%の水準で、小麦、大豆、飼料用トウモロコシ、畜産品、そして油脂などの基幹食品は海外からの輸入に依存している。
かくして円安が日本の食糧の価格高騰の第五の要因に加わることになる。
つまり日本は食糧高騰の五重苦に陥ることになる。
「スマート・テロワール」で五重苦から脱却
五重苦からの脱却の方法は「スマート・テロワール」構想の実現にある。
「スマート・テロワール」は畑作穀物の輪作、農業と畜産の連携、そして農家と地域の食品加工業との連携による地域食糧自給圏の構築を目指す構想だ。
食糧の地消地産こそ食糧価格の高騰をもたらす五重苦からの解放の突破口になるのだ。
それゆえに「スマート・テロワール」構想の実現が食糧高騰から日本を救う唯一のビジョンになるのだ。
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