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スマート・テロワール構想に追い風が吹き始めている

スマート・テロワール構想に追い風が吹き始めている

 

日本の農業、畜産業を取り巻く環境が大転換しつつある。以下にその兆候を見ることができる。

 

1.        食料自給率の改善が急務になっている

(1)     世界的に穀物の需給が逼迫している

       中国が食料自給政策を放棄して海外からの輸入を増加する方針転換をした

       穀物の主要産地の米国で温暖化による熱波などの高温障害で収穫量が減少している

       おなじく米国の穀物主要産地で水不足が深刻化している

(2)     穀物の需給の逼迫が価格上昇を招いている

(3)     日本経済の弱体化が円安傾向を招き、円安が輸入穀物の価格上昇を加速化している

(4)     エネルギー価格の上昇が物流コストを増加し、輸入穀物の価格上昇を加速化している

(5)     輸入に頼る穀物は量においても価格においてもリスクが拡大している

(6)     穀物を輸入に頼る状況がこのまま続けば将来的に日本は食料不足という状況に陥る可能性が高くなる

2.        こめ農家が経営リスクに直面している

(1)     こめの需要が持続的に減少を続け、農家の収入が維持できなくなっている

       価格が下がり続けている

       作付けの減少を余儀なくされている

(2)     高齢化によって将来の展望が閉ざされている

(3)     このままこめを作り続けると経営難に陥るので、畑作穀物生産への転換で将来の経営リスクを回避する動きが始まろうとしている

(4)     農水省もこめから畑作穀物への転換を奨励し始めている

3.        気候変動対策が急務になっている

(1)     地表から1mまでの土壌中に大気中のCO2の2倍のCO2が貯留されている。耕作されない土地では土壌の中のCO2が大気中に放出されてしまう。休耕地に植物を栽培すれば、CO2は土壌中に止まる。さらに土壌中の有機物を増やせばCO2の吸収が拡大する。つまり土壌の有機物の多様化と活性化が大気中のCO2の削減に寄与することになる。

(2)     スマート・テロワールの耕畜連携は畜産堆肥を農地にすき込むことで、土中の有機物を豊かにし、収穫物の品質向上と収穫量の増大をもたらすだけでなく、CO2削減の効果が期待できる。さらに化学肥料や農薬の使用量を削減し、持続可能な農業システムを実現することに貢献する。

(3)     このような理路に立って農水省は「みどりの食料システム戦略」を打ち出し、2050年までに日本の農地の4分の1にあたる100万haを無化学肥料、無農薬の有機農業に転換する目標を設定した

(4)     畑作穀物の輪作体系と家畜堆肥の活用によって休耕田は畑地として甦る。

 

これまでスマート・テロワール構想の実現は日本社会の抱える次のような課題に対する解決策の提供を可能にすると考えられてきた。

1.        食料自給率の圧倒的な改善を可能にすることで、日本国民の生存基盤を確実なものにすることができる

2.        農村経済圏の活性化によって大都市への人口の集中を逆転させて、真の地方創生を可能にする

3.        女性の職場を創生することで若い女性のUターンを加速して人口減にブレーキをかけることになる

4.        農村という未利用資源にあふれた、日本に唯一残されたフロンティアが再生することで、日本経済の衰退傾向に歯止めをかけ、持続的な成長軌道に乗せることになる

 

しかし、先に見た環境変化、環境の大転換にあって、日本の農畜産業を再生し、活性化するスマート・テロワール構想は、今見たような効能に加えて、以下に見るように優れて有効な戦略として機能することが期待されることとなった。

 

 

1.        食料自給率の改善が急務になっている

(1)     スマート・テロワールの構築によって日本全国に食料・エネルギーの自給経済圏が生まれ、食料自給率は50%を超え、食料不足の危機を回避できるようになる

2.        こめ農家が経営リスクに直面している

(1)     スマート・テロワール構想によって、耕種農家はコメだけでなく畑作穀物を農業経営の柱に据えることで、農業経営の持続可能性が拡充される

3.        気候変動対策が急務になっている

(1)     スマート・テロワール構想によって増加した畑地はCO2を吸収し、同時に化学肥料や農薬の使用を減少させ、持続可能な農業生産が可能になる