8月12日の日経新聞は、
農水省が有機農業推進のための制度設計を始めたと報じた。
世界で排出される温暖化ガスのうち4分の1が農業分野で占められる。
農薬や化学肥料の製造過程で温暖化ガスが排出される。
また農業機械のエネルギーも化石燃料に依存している。
さらに畑などに散布した化学肥料により、
農耕地からは一酸化二窒素(N2O)が発生する。
N2Oは削減が難しいとされる温暖化ガスで、
温暖化への影響度がCO2のおよそ300倍という。
化学肥料や農薬の多用は地中の有機物にダメッジを与える。
このため各国は有機農業への転換を急ピッチで進めている。
しかし農薬や化学肥料を使う「慣行農業」に比べて、
有機農業は除草や害虫駆除の手間がかかる。
農作物の生育スピードは遅く収穫量も減少しがちで、
コストが5割近く高いとされる。
このため各国で農業分野での温暖化ガス削減のための政策が動き出している。
欧州連合(EU)は30年までに有機農業の面積割合を25%に増やす目標を掲げ、
環境配慮型農業を目指す農家の所得支援に、
3870億ユーロ(約50兆円)の予算を充てるとした。
米国のバイデン政権も気候変動に配慮した取り組みをする農家に対し、
給付金を出す方針を示している。
日本は農水省が5月に策定した「みどりの食料システム戦略」で、
有機農業農地の割合を50年までに25%に増やす目標を掲げた。
この目標実現のための制度設計が始まった。
2022年度予算の概算要求に制度の新設を盛り込む。
脱炭素と環境負荷の低減を要件とし、
有機農業への転換に必要な資材購入や設備導入などにかかる費用を補助する。
同時に農業の大規模化や効率化も進める狙いで、
国が認定する仕組みを整備する。
日本の有機農業への転換の目標が低水準であることが懸念される。
欧州の目標に比して半分にしか過ぎない。
日本政府は50年にカーボンニュートラルを実現する目標を設定したものの、
その実行計画はいまだに具体性を欠いたまま50年目標の達成はおぼつかないままだ。
そんな中で有機農業の目標が極めて見劣りしていることは、
カーボンニュートラル目標の達成の足を引っ張ることに直結する。
ところで現在遊休水田が約100万ha存在する。
これを畑地に永久転換して有機農法で、
小麦、大豆、とうもろこし、ジャガイモなどを生産すれば、
状況は大転換する。
通年何らかの作物が栽培され、しかも地中の有機物が活性化することで、
CO2の吸収力は飛躍的に高まる。
カーボンニュートラルの目標実現が保証されるだけでなく、
日本の食料自給率も大幅な改善が期待できる。
まさに一石二鳥のイノベーションが起きるはずだ。
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