地表から1mまでの土壌に膨大な量のCO2が吸収されている
その量はなんと大気中のco2の2倍に当たる1兆7千万tに達するとされている。
植物は大気中から吸収したCO2を有機物として土壌に貯蔵する役割を果たしている、ということになる。「土壌貯留」と呼ばれるこのしくみだ。
自然状態では土壌から大気へCO2が再び放出されるため、休閑地での大豆の栽培や有機肥料を活用すれば、大気に戻る炭素を減らしたり地中の炭素量を増やしたりできる。
地中のCO2を増やすには地中の有機物を増やす土壌改良をすればよい。
有機物の増加方法は二つある。堆肥や緑肥の投入による有機物の増加が一つ。もう一つは不耕起栽培や減耕起による有機物の分解を減らす方法だ。
土壌CO2を増やして排出権を販売するビジネス創出
ここに着目して、遊休地で作物を栽培し、さらに土壌改良することで土壌のCO2を増やし、CO2の排出枠として販売する事業が創出された。
米スタートアップのインディゴ(本社マサチューセッツ州)が開発したビジネスモデルだ。
「インディゴは衛星写真や農機に付けたセンサー、土壌のサンプル調査などで地中の炭素量を測るノウハウを持つ。農地での炭素貯留は各国で研究が進むが、地中の炭素量の測定手法は確立されていなかった。
インディゴは年内にも排出枠の販売を始める。米JPモルガン・チェースなど欧米12社がすでに購入を決めた。インディゴは2024年に北海道2つ分に相当する農地で、最大6400万トンのCO2を土に蓄える計画だ。日本の年間排出量の6%前後に相当する」。
日本では住友商事がインディゴと組み、この事業に乗り出す。
「住友商事は農地の改良によって大気中の温暖化ガスを減らし、排出枠として販売する事業に乗り出す。
住商は日本を含むアジアでの排出枠の販売を担う。液化天然ガス(LNG)とセットで売ることなどを想定している。土壌改良によるCO2の削減費用は、将来の有力技術と目される海底などへの地下貯留に比べ7分の1程度ですむという」。
土壌改良の素晴らしい波及効果に着目せよ
ところで土中の有機物の増加は土壌中の微生物を活性化し、作物が必要とする栄養素を効果的に吸収する環境を整え、作物の収量増加、減農薬、減化学肥料という効果に繋がる。
ということは遊休地で作物を栽培することは、地球環境にとって一石二鳥の好結果をもたらしてくれることになる。
日本の農地には遊休地が溢れている。耕作放棄地、休耕田はすい水田面積の三分の一に当たる100万haに達する。
この遊休地でコメ以外の穀物を栽培したり、牛や豚の放牧を積極的に進めることで、日本の食料自給率は大きく改善に向かう。
つまり有機物による土壌改良と畑地での穀物栽培はなんと、
CO2削減、
食料自給率改善、
穀物の収量増加、
減農薬や減肥料による自然環境の劇的な改善、
家畜の健康増進、
ひいては人の健康増進という多面的な好循環、
つまりは真に持続可能な環境の構築に
繋がる。
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