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衆院選、明確になった「立憲民主党」の立場

以下は「スマート・テロワール協会」の前会長松尾雅彦氏が『農業経営者』2017年11月号に寄稿したコラムです。出版元の農業技術通信社昆社長のご好意で転載させていただいております。


 このくだらない選挙の中でも、民進党が分裂して、立憲民主党が発足したことは意義深いことだ。
 保守勢力に対して、革新リベラル政党が対抗していなければ社会の健全性は維持できない。プラザ合意で日本経済が暗礁に乗り上げて以来約30年間、軸のブレた政権の受け皿を目指すという政党が出現して、社会の不安定の原因となってきた。

1979年に発足した松下政経塾は松下幸之助氏が保守政治家を育成するための組織であったから、政経塾の出身者は保守政党で活躍すべきところ、自民党は二代目・三代目として地盤を形成してきた者の砦で、政経塾出身者の登竜門は開かれていなかった。
 小選挙区制に転換した機と重なり、保守党に門戸が開かれていなかったので新党をつくり政権の奪取に成功したが、保守政治家と革新政治家の雑居部屋ではほどなく内部分裂で政権は瓦解し、以降難破船の状況が続いていた。

その間に年金問題という行政側の失敗が発覚し民主党政権が誕生したが、不運にも世界はリーマン・ショックに見舞われ、欧米の金融当局者の協力で金融システムの安定を回復していた日本が、ドルとユーロのピンチを助ける立場に立ち、激しい円高の3年間を民主党と共に経験することとなった。

リーマン・ショックの傷が癒えて、為替相場で円を元のポジションに戻そうという国際金融界のリーダーの談合が日本で行なわれて、いろいろ円安に転換しようとしていた矢先に、当時の野田総理は衆院の解散を決めてしまい、黒田総裁の異次元金融緩和の登場、つまりアベノミクスとなったが、今、保守政治では解決できない事態、「働き方改革」問題が浮上してきた。

 

 「革新リベラル」が本領発揮すべき時を迎えている。強者側の意図する「働き方改革」ならぬ「働かせ方改革」を無効化しなければならない。

都市労働者の非正規社員化は8515%程度から2015年37%へと急増している。派遣工化は製造業の競争力を落とす元凶であるばかりでなく、賃金の低下をもたらし、消費需要の増加を阻み、財政で需要をつくり出し、国家の信認の弱体化を招いている。

政権がどのようになろうと日本は官僚支配の国である。官僚たちを動かす健全なリベラル政党が必要なのだ。