以下は「スマート・テロワール協会」の前会長松尾雅彦氏が『農業経営者』2018年1月号に寄稿したコラムです。出版元の農業技術通信社昆社長のご好意で転載させていただいております。
地域が自給圏を形成するためには、欠かせない組織があります。地域の農食産業を繁栄させるという使命感を持った研究組織「プラットフォーム」です。米国にはニューヨーク州のコーネル大学のように、各州立大学にエクステンションセンターが設置されています。そこは地域の風土に合った農・食の産業が研究され、地元の生産者や中小食品産業への情報発信や問題解決をしています。
日本では、農業関係の研究組織は、大学の農学部、国立の農研機構、都道府県の農業試験場の3つがありますが、どこも地域の産業に責任を持っていません。そのため、日本の農村では地域産の食品市場が育たず、輸入原料による食品市場が拡大しています。
17年11月21日、帯広畜産大学で寄付講座「バレイショ遺伝資源開発学講座」を主宰している保坂和良特任教授によるユニークなシンポジウムが開かれました。その中で浅川芳裕氏の報告が目を引きました。
氏は、「食農プラットフォーム」を「農家・地域の食・農に関わる問題をワンストップで解決できる場」として、農業先進国のイスラエル、スコットランド、オランダ、米国の事例を紹介しました。
イスラエルでは、ヘブライ大学農学部と国立研究機関、半官半民研究機関という3つの機関が協力関係を敷き、生産者に技術と経営のモデルを発信しています。大学も農家に対して技術と経営のモデルを発信しています。
大学の役割は、大きく分けて3つ。畑から食卓まですべての農食産業のモデルの理想図をつくること、栽培ノウハウを提供すること、契約栽培による収益モデルを検討することです。大学側にはセントラル農場というモデル農場があり、民の側にはサテライト農場があります。結果、イスラエルの農業生産性指標は、技術水準と付加価値の商品開発が飛躍的に伸びています。
山形県庄内地区で進めているプロジェクトは、やがて庄内地区の食農プラットフォームに発展させ、山形大学農学部高坂農場がモデル農場になり、庄内平野の傾斜地の農地の現況が転換され、サテライト的に展開していくことになるだろうと期待しています。
コメントをお書きください