以下は『農業経営者』2019年6号「スマート・テロワール通信22」に掲載された記事を転載させていただきました。
地消地産は本当に地域の経済成長に寄与するのだろうかと疑問をいだいたことはないだろうか。
長野県大学環境ツーリズム学部の古田睦教授が長野県の委嘱で行なった「上田・佐久北部地域食料自給圏消費実態調査」のなかに、ぜひ紹介したい報告がある。
古田教授は地域内経済循環を測定した。手法は「地域内乗数3(LM3)」という指標によるものだ。たとえば同じ100万円が投資されたとしよう。地域内循環率が80%の場合、地域内には最初に80万円残り、地域外には20万円流出する。次に80万円の80%の64万円残り、その次には64万円の80%の51万円が残る。こうして地域内に残る金額を足していくと最終的に500万円になる。
一方、地域内循環率が60%の場合、同じように計算すると合計は250万円になる。つまり、地域内循環率が80%の場合と、60%の場合では、地域内の所得の効果は2倍も違うのである。
LM3は、資金循環の最初の3回だけを対象として乗数効果を測定する方法である。3回を検証すれば効果が明らかだからである。
この手法を用いて古田教授は東信地域の豆腐について測定した。
1~3回目をR1~R3とする。
R1:豆腐の小売店売上高
R2:豆腐の地域内購入額+地域内豆腐加工業人件費+地域内豆腐加工業者所得+地域内流通人件費R3:大豆生産者所得+大豆生産者地域内資材購入額とする。LM3は(R1+R2+R3)/R1で算出する。
A:豆腐についてすべての大豆を「域外」から仕入れた場合、LM3は1.39。
B:すべての大豆・その他資材を「域内」から仕入れた場合、LM3は1.74。
C:「域外」生産の豆腐を仕入れた場合、LM3は1.11。
つまり、Bのように、すべて「域内」から仕入れることによって、地域の経済成長につながっていくという論拠が数字で示されたことになる。
総会で紹介された藻谷浩介氏の論文にもあるように、地消地産は地域の経済を成長させる原動力である。
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