以下は『農業経営者』2019年5号「スマート・テロワール通信21」に掲載された記事を転載させていただきました。
2019年3月11日に開催された長野県主催の「スマート・テロワール実証実験検討会」に出席した際、私の「気づき」として伝えたこと。
目標を明確にし改善につなげる
検討会は、実証実験の検証(Check)という位置付けだ。この検証を効果的なものにするにはどうしたらよいか。
まず明確な目標の設定が必要だ。この実証実験では何を目指すのか。水田を畑地に変え、穀物を輪作し、堆肥を投入して土壌を肥沃なものにして生産性を上げていく。目標値は欧米の穀物生産の収量である。
この目標を実現するためにはPDCAが必要だ。PDCAのP(Plan)とは仮説である。この仮説をしっかり立てたうえで、実験(Do)をし、検証(Check)する。毎年、仮説と検証を繰り返し、さらに検証を基に改善(Action)を繰り返す。
目標と仮説が明確になれば、次年度に向け、どんなところを改善して目標に近づけていくのかということも自ずと明確になってくるだろう。
加工品の品質評価と土壌の評価
出来上がった生産物の品質をどう評価していくか。今回の試食会のように、実際に食べる人の評価も大事な評価のひとつで、積み上げていく必要がある。ただし、この取り組みで生産されている作物は加工されて消費者に届けられる。したがって加工者による作物の品質評価が、生産の目標に取り入れられなければならないだろう。
土壌の評価については、すぐに結果が現れるものではないが、堆肥投入による生物性の変化のデータを蓄積していき、最終的に肥沃な土壌をつくることを目指してほしい。
契約栽培と地域循環流通
前述のように良い品質の加工品をつくるためには、契約栽培が重要だ。この契約栽培は加工業者と生産者がダイレクトに価格と量を契約して作付けするということが前提だ。そうやってはじめて収量や品質が良い形で生産でき、生産者の経営安定につながるだろう。
最後に流通について。古田先生が提案したとおり、地域内循環流通が非常に重要になるだろう。米国では10km四方の地域内の流通を賄うというビジネスが展開され始めたところだ。長野県でも小さな地域循環流通が大きな影響を与える時代が来るだろう。
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